ミラボー橋の下

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「いやー、今日は暑かったねえ。湿度が高くて、

蒸し暑くて、こりゃもう完全に夏の暑さだね」


「今日からもう7月だもの。今年も前半戦は終了、

今日から後半戦だよ。どうだね、前半戦を振り

返って、何か思うとこある?」


「うーん、あまりに月日の過ぎ去るのが早くて、

いやになるなあ。もう、あまり残り時間もない

のにね」


「またこの辺で、古今集あたりの歌を引用して、

月日が経つの早いのを嘆いてみるのかい。

いつもの手だね」


「うーん。いや今日はシャンソンで行ってみよう。

なーに、色々引き出しはあるのさ」


シャンソンねえ。まあいいや、聞いてやろう

じゃないか」


「全部だと長過ぎるので、ミラボー橋の一節

だけを引用するよ。


 Passent les jours et passent les semaines

Ni temps passe

Ni les amours reviennent

Sous les ponts Mirabeau coule la Seine

ミラボー橋」 ギョーム・アポリネール


「おいおい、フランス語じゃ全然意味が分から

ないぜ。まあ、どこかで聞いたようなシャンソン

だがね。」


「仕方ないなあ。有名なシャンソンだから、色々

な歌手が歌っているよ。イヴェっト・ジローとか

ね。じゃ、訳してやるか」



 「日々が過ぎ、週また週が過ぎて行き

      過ぎた時も

    恋も戻って来ない

  ミラボー橋の下 セーヌが流れる」


「中々、良い歌詞だね。過ぎた時も恋も戻って

来ないか。正にその通りだよ。」


「そうさ。まあ、月日の過ぎ去って行くのを

詠嘆する気持ちは、洋の東西同じだね。」


時の流れに身をまかせ。。。か」


「それはテレサ・テンだろ。それはそれで良い

歌だけどね」


「やっぱりシャンソンよりこっちの方が良いな」


「まあ、そりゃ好みの問題だね」