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「今日も熱海は、小雨が降る暗い一日。
このお天気、まったくいやになっちゃうねえ」
「秋雨前線が停滞している内に、台風が接近
しているようだね」
「こんな日は、家に籠ったままで、来し方、
行く末に思いを馳せるしかないなあ」
「気取ったことを言っているけど、要するに
気分が落ち込んでいるのだろう」
「こんな歌が頭に浮かんだよ。
みな人の知りがほにして知らぬかな
かならず死ぬるならひありとは
人は知ったような様子をしているが、
実は知らないのだなあ、、人は必ず死ぬ
というならいのあることを」
「うーん。随分暗い歌だなあ」
「よーし、もう一つ行こうか」
「いやいや、こういう歌はもう結構だよ。
何だか気が滅入ってくるからなあ」
「じゃこれはどうかな。
明日いかにならむは知らず今日の身の
今日するわざにわがいのちあり
明日はわが身がどうなっているかは知ら
ないが、今日のわが身で今日の仕事をする
ことに自分の命がある」
「うん、うん。この歌は良く分かるなあ。
今日という日を精一杯生きていくことが大切
ということだね」
「そりゃ良かった。じゃまた明日！」
